注意!この記事はかなり古い情報です。現在のQGISとは操作方法が違いますので注意してください
はじめに
林地で災害が起きて、それが雨量に起因する場合、国の補助を受けて災害復旧する場合の採択基準に一定以上の雨量(80mm/24hなど)が発生している事実が必要です。
その際、災害発生現場が雨量観測所から離れている場合、観測所からの距離配分で現場の雨量を推測しますが、紙の地図で自作するのは面倒なものです。
そこで、QGISを使うと、下の図のような雨量の等高線「等雨量線」を簡単に作成することが可能です。
図 等雨量線を作成した地図
この記事で作成する、雨量ラスタレイヤの作成方法は、2017年6月30日に開催されたFOSS4G HokkaidoのQGISラスタ中級編ハンズオンで行われた内容をヒントにしています。
データの準備
必要なデータは次のとおりです。
l アメダス地域気象観測所一覧データ(気象庁)
CSVファイルでダウンロードできます。
緯度経度の度と分が別のフイールドになっているので、一つのフィールドに修正します。
度分秒も10進数に直しておくと後で扱いやすいと思います。

図 雨量観測所の座標を10進数に修正した表
l 雨量データのCSV(気象庁)
必要な観測地点を選択して、必要な期間と必要なデータを選択します。今回は2016年8月17日の北海道十勝地方のデータを利用してみます。
観測所のCSVをQGISに読み込む
気象観測所のCSVデータをQGISで読み込みます。
QGISでは「デリミティッドレイヤの追加」でCSVファイルを選択します。すると、次のような画面が表示されるので、「Xフィールド」に「経度」、「Yフィールド」に「緯度」を選択します。

図 デリミティッドテキストの画面
「OK」ボタンをクリックすると、マップキャンバスに観測所のポイントが表示されます。
その際、「CRSが定義されていません」とエラーが表示されるので、レイヤを右クリックして「レイヤのCRSを設定する」を選択し「WGS84(EPSG:4326)」を選択します。
必要な観測所のみを保存する
全国のポイントは必要ないと思うので、必要な観測所のみ保存します。
自分に必要なポイントのみ選択して、レイヤを右クリックして「名前をつけて保存する」を選択します。
「形式」は、今回はシェープファイルに保存しますので「ESRI Shapefile」を選択します。
座標系は、WGS84のままでもいいですし、平面直角座標系に変更しても構いません。
「選択地物のみ保存する」にチェックを付けて、「OK」ボタンをクリックすると、選択したポイントだけを新しいファイルで保存できます。

図 レイヤを名前を付けて保存する
必要な雨量データを準備する
気象庁の「過去の気象データ・ダウンロード」で、必要な地点の選択、項目の選択、期間の選択、オプションの選択をして、「CSVファイルをダウンロード」すると、必要な日にちの雨量データ(CSVファイル)をダウンロードできます。 しかし、ここでダウンロードできるCSVファイルは、観測地点が列になって、データが行になっています。
このあとで、先程作った観測所レイヤに雨量データを結合したいのですが、これでは行列が逆になっています。
Excelなどの表計算ソフトでは、行列を入れ替えてコピーすることができるので、その機能を利用して、行列を入れ替えたデータを作ります。

図 Excelなどで雨量データの行列を入れ替え
行列を入れ替えたあと、不要なデータを削除して、観測所の名前と雨量のみにして、Excel2003形式ファイル(xls)で保存します。複数シートが有る場合は、シート名をわかりやすくしておくといいです。

図 雨量データの例
ここでCSVファイルではなくExcelファイルを利用するのは、数字を数字としてQGISに読み込ませるためです。
雨量データをレイヤに追加する
作成した雨量のExcelファイルをQGISのレイヤに追加します。Excelファイルをドラッグして、QGISの画面にドロップすると、複数シートが有る場合には、シート選択ダイアログが表示されるので、シートを選択して「OK」ボタンをクリックするとレイヤに雨量データが追加されます。

図 Excelファイルをレイヤに追加するときにシートを選択する

図 レイヤに追加されたExcelデータ
ExcelファイルをQGISのレイヤに追加すると、文字コードが「UTF-8」でなければなりません。レイヤを右クリックして、プロパティを選択し、一般情報の「データソースエンコーディング」を「UTF-8」にします。

図 レイヤプロパティで文字コードを設定
観測所データと雨量データを結合する
観測所データと雨量データを「観測所名」で結合します。
観測所ポイントデータを右クリックして、プロパティを選択します。「結合」を選択して、「+」ボタンをクリックして、結合ダイアログを表示します。
「レイヤの結合」に雨量データを選択します。「フィールドを結合する」で、雨量データの観測所名フィールドを選択します。「ターゲットフィールド」で観測所データの観測所名を選択します。
「フィールドの接頭辞」にチェックを付けて、テキストボックスの中を空白にします。
「OK」ボタンをクリックすると、結合ルールが登録されます。

図 レイヤプロパティの結合の設定
結合ルールはいつでも編集できます。
観測所データの属性テーブルを確認すると、雨量データが追加されています。

図 結合した雨量データ
結合したレイヤを名前をつけて保存
結合したフィールドは仮想的に結合しているだけなので、次のステップで選択できません。そこで、データを結合した状態の新しいレイヤを作成するために、レイヤを「名前をつけて保存」します。
雨量を結合した観測所レイヤを右クリックして、「名前をつけて保存する」を選択します。
ファイルの保存先を選択して、「OK」ボタンをクリックすると、新しいレイヤが作成されます。
紛らわしいので、元のレイヤは削除しておきましょう。

図 雨量観測所に雨量データを結合した新しいレイヤ
「変換プラグイン」の確認
次のステップの「データ補間」を利用するには、「変換プラグイン」が有効になっている必要があります。
「メニュー「プラグイン」→「プラグインの管理とインストール」で「インストール済み」を選択し、「変換プラグイン」にチェックがついているか確認します。チェックが付いていなければチェックを付けます。

図 変換プラグイン
「データ補間」で雨量ラスタを作成
観測所の雨量データを使って、観測所間のデータを補間した雨量ラスタレイヤを作成します。雨量ラスタレイヤを作成することで、現場の雨量を推定できます。
メニュー「ラスタ」→「データ補間」→「データ補間」を選択します。
「入力」の「ベクタレイヤ」に観測所レイヤを選択し、「補完する属性」で雨量データのフィールドを選択します。
「追加」ボタンをクリックすると、リストに選択したレイヤとフィールドが追加されます。
リストに追加されると、その範囲の座標が自動入力されます。
「出力」の「カラム数」「行数」を設定します。範囲の大きさで適切な数値を設定してください。数字を大きくすると、ラスタのメッシュが小さくなり、メッシュ数が多くなります。
「出力ファイル」で、ラスタレイヤを保存するファイルを指定します。ここで指定するフォルダ名、ファイル名は半角英数字のみとして、日本語を含まないようにしてください。
「OK」ボタンをクリックすると、ラスタレイヤが作成されます。

図 データ補間の設定画面

図 作成された雨量ラスタレイヤ
ラスタレイヤのファイルは拡張子「asc」と「prj」というファイルが作成されます。
等雨量線を作成する
雨量ラスタレイヤのメッシュには、観測所間のデータを補間した雨量が記録されています。雨量をスタイルで色分けすることはできますが、地図を見ただけで雨量を確認することはできません。
そこで同じ雨量を結んだ線(ライン)の「等雨量線」をベクタレイヤで作成します。
メニュー「ラスタ」→「抽出」→「等高線」を選択します。
「入力ファイル(ラスタ)」に雨量ラスタレイヤを選択します。
「等高線(ベクタ)を出力するファイル名」で保存するベクタレイヤのファイル保存先を設定します。
この時、入力ファイル、出力ファイルともにフォルダ名、ファイル名は半角英数字のみとし日本語は使わないでください。
「属性カラム名」にチェックを付けてください。フィールド名は変更しなくても構いません。フィールド名は半角英数字のみとしてください。
「OK」ボタンをクリックすると、「処理が完了しました」とメッセージが表示され、等雨量線が作成されます。「閉じる」ボタンで終了します。

図 等高線の設定画面

図 作成された等雨量線
等雨量線のシェープファイルは、上で指定した出力ファイルで指定したフォルダ内に「contour」という名前のシェープファイルで保存されます。
レイヤの順序を設定して、見やすいようにします。
等雨量線のスタイルとラベルの設定
等雨量線のスタイルとラベルをせっています。
ラインのスタイルは見やすい色と太さを選択してください。
ラベルは「ELEV」フィールドを選択して、線上に表示します。「バッファ」か「背景」を設定すると見やすいでしょう(画像は背景を楕円で設定した例)。
(画像では、雨量ラスタレイヤも「単バンド疑似カラー」でグラデーション分類しています)

図 スタイルとラベルを設定した等雨量線
おわりに
はじめはすこしステップが多いのでわかりづらいかもしれませんが、慣れれば簡単に等雨量線を作成できます。
記事で作成したプロジェクトファイルとレイヤファイルもここに置いておきますので参考にしてください。